最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
彼の腕が背中に回り、距離を詰められた。目の前に迫る情熱的な眼差しに、びくりと震える。

「同意とみなし、ここで君を抱く」

「ちょっ――志遠さん!」

ソファの座面に転がされ、逃げ道を奪われた私は、仕方なく口を開いた。

「サロンに行くって言ってたのに……どうして部屋で、ふたりきりで……」

「誰もいない場所で話がしたいと言われて――」

「じゃあ、服が乱れていたのはなんで……っ」

きゅっと唇を引き結ぶと、志遠さんはわずかに目を細め、私の上から体をどかした。

「……正直に話す。エレノアに抱いてほしいと言われた。してくれないなら、悲鳴を上げると」

「な……に……それ」

「それが彼女の常套手段なのだろう。大抵の男は従う。悲鳴を上げられて犯罪者にされたくはないからな。伯爵の娘の言うことなら、大抵の人間は信じてしまう」

なんて横暴なことをするのだろう。愕然としながら、志遠さんの隣に上半身を起こした。

「……それで……従ったんですか?」

胸がひりひりと痛んで、言葉が震える。

「抱けと脅されて、俺は――」

志遠さんは静かに目を閉じて、シャツの胸ポケットから携帯端末を取り出した。

「録音した」

「え……?」

< 158 / 272 >

この作品をシェア

pagetop