最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
男性はこちらを威圧するかのごとく手脚を組んだ。

「軽々しく知らない男の車に乗るな。このままどこかへ連れていかれたらどうする。君は警戒心が欠落している。さっき詐欺に遭ったばかりだというのに、なにも学んでいないのか?」

それから私を待っていたのは、異国の地で全財産を失った憐れな女性へのいたわりや慰め、あるいはラッキーなお姫様展開ではなく。

美形だが神経質そうな男性の、長々としたお説教だった。



「――まず、英語もろくに話せない状況で単身日本を出るなんて無謀だ。たまたま私がいたからよかったものの、ひとりだったらどうするつもりだ。警察へ連絡はできたのか。誰かに助けを求められたか。大使館までたどり着けたか」

美人は怒るとめっちゃ怖い。

「……すみません」

申し開きもなく、私は素直にうなだれた。

自分ではがんばって準備をしたつもりだった。現地のことを調べて、観光プランを立て、ガイドブックを何度も読み込んで――。

だが、犯罪に遭わないように気をつけてはいたものの、実際に遭ったらどうするかまでは考えが至らなかった。

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