最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「母親を連れてこようとしたと言っていたな。親孝行がしたいのなら、まず心配をかけるような行動は慎むべきだ」

「ごもっともです……」

すりの犯行グループと金で交渉しようとした彼に言われるのは少々心外な気もしたけれど、ここは反論せずおとなしく反省する。

「忠告しておくが、たとえ旅行者が犯罪に遭い無一文になろうとも、大使館は原則、金を貸してはくれない。君はこの先、どうやって生きていくつもりでいる?」

正直ノープランだが、素直にそう答えたら彼の怒りを煽ってしまいそうだ。

「……大変申し訳ありませんが、お金を少しだけ貸していただけないでしょうか。必ずお返ししますので」

彼はフンと鼻を鳴らし、せっかく生まれ持った美貌を憎々しげに歪めてこちらを見下ろした。

「できることなら断ってやりたい。もちろん、金を出すのが嫌だとかそういう次元の話じゃないぞ。いつでも誰かが助けてくれるほど、世の中は甘くないのだと身をもって知るべきだ。……かと言って、このまま君に行き倒れられても困る」

これでもかと文句を連ねるも、貸さないわけにはいかないと考えているようだ。

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