最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
遅めの朝食をとり、帰国の準備を整えた。大きな荷物は志遠さんが全部配送してくれるという。
私はトランクとショルダーバッグをひとつずつ持って空港へ向かう。
彼は空港まで見送ってくれる――のかと思いきや、一緒に搭乗手続きをしていることに気づき、私は声をあげた。
「もしかして、日本まで着いてこようとしています?」
「もちろん。君はすぐに騙されるから、十二時間なんて危なっかしくてひとりにさせられない」
そう言って私の手を引き、ゲートをくぐる。いつの間にか私が持っていたエコノミーのチケットはファーストクラスに差し替えられていた。
「あの……さすがに大丈夫だと思います。だって直行便でしょう? 間違いようが――」
「君は俺の想像を超えるからな」
「ちょっと過保護すぎませんか?」
しかし、フライトの時間が近づくにつれ、私は憎まれ口すら叩けなくなっていった。
「……ファーストクラスって、エコノミーより揺れなかったりします?」
「揺れ?」
私の異変に気付き、志遠さんがこちらをのぞき込み怪訝な顔をする。
「どうしたんだ陽芽。顔色が悪い」
「飛行機、あまり得意ではなくて」