最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
初めて飛行機に乗ったのは、高校の修学旅行のとき。

運悪く乱気流に巻き込まれ、機体がぐらんぐらん揺れて死を覚悟した。

あれを経験して以来、飛行機はちょっぴり――いや、かなり苦手である。

「ほら。俺が一緒でよかったじゃないか」

かいつまんで事情を説明すると、志遠さんはドヤ顔で私の手を握った。

「志遠さんがいても怖いものは怖いというか……もういっそ眠っちゃった方がいいかなって」

「そんな怯えきった顔をして、眠れるのか?」

思わず私は沈黙する。イギリスへの往路もつらかったが、親孝行という目的があるからがんばれた。

あとは帰るだけとなってしまった今、心の拠り所がなくて心臓がばくばくする。

「不安なら、俺がずっと手を繋いでいてやる。一緒に死ぬと思えば怖くないだろう」

早くも死ぬ話などしないでほしい……! 私は怯えきったまま、彼とともに飛行機に乗り込んだ。

ファーストクラスの座席は驚きの広さだった。パーテーションに囲まれた個室のような設計で、大型モニター付き。座席はフルフラットで寝転ぶことができる。

「よく眠れそう!」

「……陽芽には恋人との逢瀬を名残惜しむ気持ちはないんだな」

あきれたように志遠さんは言う。

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