最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
かかわってしまった以上、この先、私になにかあったら寝覚めが悪いのだろう。

「それに警察には、君は私の友人だと説明した。大切な友人が荷物を奪われたから念入りに捜索してほしいと。でなければ、君の荷物は永遠に返ってこないだろう」

むしろ、友人だと説明したら待遇を変えてもらえるということ? この男性はいったいどんな立場の人なのだろう。

「あの……ここであなたに出会えたことは、とても幸運だったと思っています……」

でなければ彼の言う通り、ひとりではなにもできずに行き倒れていたかもしれない。

最悪の場合、犯人たちに路地裏に連れ込まれ、乱暴されていたかも――ことの深刻さは自分でも充分よくわかっている。

「だから。幸運で済ませるなと言っている」

私がしゅんと頭を下げると、彼はスモークガラスの外に視線を移し、小さなため息をついた。

「……大使館に着いた」

その言葉にハッとして外の景色を見れば、お城と見間違うような石造りの建築物がそびえ立っていた。建物中央の二階部分に日の丸の国旗が掲げられ、風を受けて緩やかになびいている。

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