最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
夕方、外に出るとすでにイルミネーションが灯る時間になっていた。近くの商店街からはクリスマスソングが流れてくる。

……妊娠、かあ……。

診察結果に茫然としていた私は、婦人科の入口の前で、駅へと続く賑やかな通りをぼうっと見つめていた。

そのとき、プッとクラクションが鳴り、一台の高級車が路肩に停車する。

後部座席のドアが開き「陽芽!」という呼びかけとともにまさかの人物が降りてきた。

「志遠さん!? どうしてここに……!」

「仕事で日本に来ていたんだが、会える時間が取れるかわからなくて伏せていたんだ。あまり期待させてもいけないだろうと思って」

そう言って苦笑しながら、私のもとへ歩いてくる。

「早く仕事を片付けることができたから、会いに来た」

そう言い訳のように語りながら、周囲のイルミネーションに目線を向けた。

「クリスマス、だからな」

「志遠さん……」

きっと忙しいのに、私のことを考えてくれていたのだ。

便りがなかったわけではなく、私と会う時間を捻出しようとがんばってくれていた。そう思うと、じんわりと胸が温かくなってくる。

「で、陽芽はどうしてここにいる?」

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