最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
尋ねられた私は反射的に振り返り、今しがたお世話になった病院へと目を向けた。

「婦人科……? まさか――」

ぽつりとつぶやき、志遠さんは唖然とする。勘のいい彼はおそらくこの一瞬ですべての事情を察したに違いない。

「実は……」

叱られることを覚悟し、私は事情を説明した。



「どうして今まで気付かなかったんだ」

予想通りのお小言が飛んできて、私はラグマットに手をついて頭を下げた。

「すみませんでした」

「陽芽、お腹をつぶすような体勢を取るな。赤ちゃんがかわいそうだ」

「あ。ごめんなさい……」

志遠さんが額に手を置いてうなだれる。

自宅に帰ってきた私たちは、今後について相談中だ。

「誤解するなよ。喜んでいないわけじゃない。うれしいよ」

そう言って志遠さんが私をそっと抱きしめる。

「同じくらい、あきれたけどな。妊娠のこと、おかしいなくらいは思っていただろう?」

「でも、つわりも全然ないし、お腹も大きくなっていないし」

「なっている。ちゃんと鏡を見たのか?」

「え?」

慌てて姿見の前に立ち、横向きで姿勢を正す。

言われてみると少しだけ、下腹部がぽっこり出ているような。

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