最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「よく気づきましたね」

「愛した女性の体だぞ。あたり前だろう」

いったいなにがあたり前なのかわからないし恥ずかしいけれど、しばらくぶりに会った志遠さんは私の体の変化にすぐ気づいたみたいだ。

「浮かない顔だな、陽芽は子どもが嫌いなのか?」

「そうじゃありません、心の準備が追いついていないだけで……」

「君がまだ妊娠をしたくなかったというのなら、あの日、きちんと避妊をしなかった俺の責任だ」

私はふるふるとかぶりを振る。後悔しているわけじゃない。ただ、とても驚いているだけ。

そおっと自身のお腹に手をあてる。この中に命が宿っているだなんて、すごく不思議な感覚だ。

同時に責任も感じる。私は大切な命をきちんと育てることができるのだろうか。父や母が私にしてくれたように。

「志遠さんは、驚かなかったんですか?」

「心の準備という意味なら、三秒でできた」

「はやっ」

「君との結婚を疑っていなかったからだ。子どもについても、遅いか早いかだけの問題だと思った」

真摯な、でも気遣わしげな目で私の両手を握り込む。

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