最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
穏やかな笑みを浮かべる志遠さんを、私は玄関で見送る。マンションのエントランスまで行こうとしたけれど、寒いからダメだと叱られてしまった。

「陽芽。目を閉じて」

言われた通りに目をつむると、左手の手首にひんやりとしたものを当てられた。

驚いて目を開けると、ホワイトゴールドのチェーンに三つのダイヤが並んだ、上品なブレスレットが巻かれていた。

「これ……」

「メリークリスマス。……こんなことになるなら、婚約指輪にしておけばよかったと少し後悔している」

「後悔だなんて、そんな。ありがとうございます。すごくうれしいです」

きっと私を想って選んでくれたのだろう。胸がきゅっと疼き、この二カ月の寂しさが埋まった気がした。

同時に大変なことに気づき、私は「あっ」と蒼白になる。

「あの、私、会えるとは思ってなくて。プレゼントを――」

「いい。一番のプレゼントをもうもらってる」

志遠さんが私のお腹にそっと手をあてる。

この子がなによりのプレゼントだ――彼にとっても、私にとっても。

「結婚について、父や祖父には話を通してある。安定期が過ぎたら、一緒に祖父のもとへ行ってほしい」

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