最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
志遠さんのお祖父様は都心からそう離れていないところに住んでいる。今も相談役としてお仕事をされていて、月に何度かは東京本社に顔を出しているそうだ。

お祖父様への挨拶――私は緊張しながらも「はい」とうなずく。

「父はイギリスで療養している。心臓の調子がよくなくて、飛行機には乗れないんだ」

「じゃあ、お父様の方にも、私が安定期に入ったら挨拶に――」

「でも陽芽は飛行機が苦手だろ?」

不安そうな顔をする志遠さんに、私はにっこりと笑いかける。

「志遠さんと一緒なら大丈夫です。この前もあっという間に日本に着いてしまいましたし」

「ありがとう。それなら出産した後に行こう。子どもの顔を見せてやりたい」

「はい!」

志遠さんのお父様がどんな人かは知らないけれど、孫の顔を見ればきっと喜んでくれるだろう。

「年明けには一緒に暮らそう。ああ、引っ越しの準備は考えなくていいからな。業者に全部運ばせる。荷造りなんてするなよ」

私が重たいものを運ばないように念を押してくれているようだ。抜かりない心配性。思わずくすくすと笑って彼の言葉に従う。

「はい。わかりました」

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