最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「……まぁ、私の場合は母校のパブリックスクールに多額の寄付をしているから、そのせいもあるだろうけれど。イギリスの上流階級(アッパー・クラス)は慈善事業とか寄付とか、そういうのが大好きなんだ」

そう言って彼は自虐的な笑みを浮かべる。

全然謙遜になっていなくて、私は笑顔を張りつかせた。

パブリックスクールって、たしかセレブが通う名門中等学校だったよね?

そこに自分も通っていたというのだから、彼は家柄からしてとんでもない良家なのだろう。

そもそも、多額の寄付ができるほど利益を上げているということだ。

「あなた自身も上流階級の……」

「いや。私は中流だよ。ここ英国で上流階級と呼ばれるのは生粋の貴族だけだ。王室の人間や、侯爵、伯爵なんかの称号は聞いたことがあるだろう。彼らは世襲制で、称号が子の代に受け継がれていく。純然たる血統主義だ」

そう言って彼は自身の前髪をひと房つまむ。艶やかな漆黒の髪と柔らかな印象の顔立ちは、貴族ではないことを主張しているかのよう。

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