最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
第九章 今、目の前にあるしあわせに感謝を
十二月上旬。ロンドンの気温は東京よりもぐっと冷える。雨が降ることも多く、鬱々とした天候が続いている。

日付が変わる頃。ロンドンにある御子神グループ欧州統括本部の執務卓でまだ承認作業に追われていた俺は、本日最後の仕事を片付け、深くため息をついた。

――金融危機の再来かとまで言われていたが。

実際の被害規模はそこまで及ばず、景気の低迷が日本に及ばなかったことが不幸中の幸いだった。

日本を主軸にしている御子神グループの関連各社が立ち直るのも、イギリス国内の他企業と比較してかなり早い方だった。

負債ゼロとは言えないが、数年かけて取り戻せるレベルに収まっている。

具体的な道は示した。ここから先は各企業の経営陣に任せよう。

出しゃばりすぎても禍根を残すし、放置しすぎても反乱分子を作りだしてしまう。絶妙な塩梅で主導権を渡し、日本へ帰るつもりだ。

俺は日本で旗を振り、最低限の意思決定をこなす。

とはいえ、関連子会社を含めれば数千にも及ぶ巨大グループを統率するからには、最低限というだけでもとんでもない量になるのだが。

それでも、年末にはこの地を発って、日本に根を下ろせるだろう。

――陽芽と晴のそばにいられる。

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