最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
ダリルは観念したのか、苦笑して肩をすくめた。当人が一番よくわかっているはずだ、このままここにいるべきではないと。

「……なら、俺に最後の仕事をさせてください」

ダリルの珍しく真剣な顔つきに、俺はぴくりと片眉を跳ね上げる。

「エレノア様と結婚してください」

また始まった、と俺は息をついた。ダリルはどうしても俺に家柄のいい女性をあてがいたいらしい。

彼自身、この国に根付く貴族の慣習に縛られているから、そう考えるのだろう。

「バカを言うな。俺にはもう妻子がいる。だいたいエレノアと結婚したところで、俺は貴族にはなれない。俺に伯爵の継承権はない」

「ですが、対外的には今とは比べ物にならない権力を得られる」

「そんなものはいらないんだよ、ダリル」

静かに諭す。彼は爵位に翻弄され生きてきたから、なんとしてでも俺に一定の地位を持たせてやりたいと考えるのだろうが、俺はそこまで地位に固執していない。

「俺はこれ以上、肩書きなど求めていない」

きちんと経営ができればそれでいい。御子神グループも、祖父の時代より規模が拡大し経営も安定した。

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