最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
まぁ、つい先日まで危機的状況にあったわけだが、長い目で見れば当然起こりうる浮き沈みを経験しただけだ。

「これで充分だ。そろそろ個人的な幸せにも目を向けたい」

「……つまり、ヒメとそのお子さんとのことですか?」

「くだらないか?」

「そうは言いませんが――」

ダリルは悔しいのだろう。俺の成功がまるで自身の成功であるかのように錯覚している。

「祖父や父にも報告を入れた。父は手放しで喜んでくれたし、祖父は少々手こずったが、これまでの俺の功績を鑑みて多少の無茶は目をつむると言ってくれた」

父は子どもと会うのを楽しみにしてくれている。心臓病の関係で飛行機に乗れないくせに、日本に会いにいくと聞かず、慌てて止めたほどだ。

だからいずれ父のために、陽芽や晴をロンドンに連れてこようと思っている。仕事が俺の手を離れ、自由に動けるようになったら、すぐにでも。

「ダリル。お前はエレノアと個人的に連絡を取っているようだな」

ダリルがわずかに目を細くする。

パーティーで強引に誘われた一件以降も、たびたび絶妙なタイミングで彼女と顔を合わせる機会があった。

仕組まれているとしか思えない――露骨にダリルがエレノアを勧めてくるところを見ても、もはやかまをかける必要もないだろう。

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