最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「エレノアに間を取り持てとでも言われたか? もし脅されているなら、相応の対処を――」

「バカにしないでください。俺は自分の意思で、あなたのためになることをやっているんですよ」

ダリルがぎりっと歯がみする。

中身は頑固で猪突猛進な彼だ。こうなったら人の話を受け付けない。優秀な彼の、唯一の弱点でもある。

「あなたを正しい人間と結婚させることが、俺の最後の役割だと思っています」

「ダリル……!」

己の思想を問答無用に叩きつけ、ダリルは執務室をあとにする。外で待機していた秘書とともに立ち去った。

「……自我が芽生えた時点で、潮時なんだよ」

秘書として雇ったあと、最初の数年間はとにかく俺の言うことを素直に聞いて全力で仕事をこなしてくれた。

やがて、少しずつ自分の主張を織り交ぜるようになってきた。その兆候が出てきた段階で彼を解放してやるべきだったのだ。

幾度となく実家へ戻れと説得したが、彼はイヤだと言って聞かなかった。まだ恩を返しきれていないと。

学生時代、貴族の子どもたちに虐げられたことを彼はずっと根に持っているようだ。俺を成功者に仕立てることが復讐だとでも考えているのだろう。

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