最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「見ての通り、私は日本人――日本国籍だ。騎士の中でも、とくに『サー』と呼ばれるのは英国籍の人間とされているが、私の場合、親しみを込めてサー・シオンと呼んでもらっている」

つまり、彼は日本人であるにもかかわらず、イギリス人から騎士として認知され、親しまれている人間だということ？

いまいちピンとはきていないが、とにかくすごい人だということはわかった。

「我々日本人から見ればイギリスは不思議な国だろう。現代もまだ階級社会が残っていて、上流と中流を明確に分離している」

つまり、親が偉ければ子も偉いというヤツだろうか。ひと昔前の序列社会を想像して少しだけ怖くなる。

そんな私を見て、彼が慌てて言い添えた。

「階級社会とはいうが、あまり旧時代的なヒエラルキーを思い浮かべないでほしい。この国の貴族たちには慈善の精神が根付いている。社会に貢献し、恥じない振る舞いをするよう、幼少の頃より教育されているから安心してほしい」

まるで自分が見てきたことのように言う。いや、実際に見てきたのだろう、彼の母校はパブリックスクールだと言っていた。

実際に上流階級の子どもたちとともに学び、そういう教育を受けてきたに違いない。

「伝統的と思ってほしい。英国王室が多くの国民から支持されるように、古きよき文化こそが英国人の誇りなんだ」

彼の美貌に穏やかな笑みが浮かぶ。

ずっと気難しい顔ばかり見せられていたから、思わずドキリとしてしまった。笑いかけられたのは初めてだ――笑われたことならあったが。

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