最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
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志遠さんが帰国する前日の十二月二十九日。午後三時にダリルは迎えに来ると言った。

頼子さんには少し遠出の買い物をお願いして、その時間に鉢合わせないよう手を打ってある。

ダリルの言葉に従うか、今も悩み続けていて、まだ結論を出せたとは言えない。

私たちが姿を消したなんて知ったら、志遠さんはショックを受けるだろう。頼子さんだって、自分を責めるに違いない。

こんなことをしても、悲しい結果にしかならない……。

たとえ志遠さんと別れるにしても、きちんと顔を合わせてお互いが納得すべきではないか――答えが出せないまま、タイムリミットを迎える。

十五時、ドアフォンのチャイムが鳴った。ダリルはスーツを纏い、門の前に立っている。彼のうしろには黒い高級車が見えた。

私は門を解錠し、晴を抱いて玄関へと向かう。

「ヒメ、お迎えにあがりましたよ」

しかし、私が外出する準備を整えていないのを見て、ひくりと目もとを引きつらせた。

「少しは俺の言ったこと、考えてくれました?」

「考えました。ずっとずっと考えて、やはり納得できなくて……」

「ヒメもシオンに似て、強情だなぁ」

ダリルはふうと短く息をついて、冷ややかに笑う。

私はぎゅっと晴を抱きしめて、底知れない怖ろしい笑みに立ち向かった。

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