最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
ぴとっと寄り添うと、彼は小さく笑みを漏らし、私の体を抱きとめてくれた。

「これからは一階の和室で、みんなで寝ようか」

「でも、そしたら志遠さんが寝不足になっちゃう」

「もちろん、つらくなったら自室できちんと寝るよ。だから陽芽もつらくなったらちゃんと言うんだ」

志遠さんが私の額にキスを落とす。私を甘やかそうとしてくれているときの常套手段だ。

「――でも、今はもう少し俺に付き合ってほしい」

そうゆったりとささやいて、深い漆黒の瞳で私を射止める。

「もちろん」

ゆっくりと目をつむると、求めに応えるように唇が触れた。

優しく絡まり、次第に深く、濃厚に交わっていく。ふたりの情熱が抑えきれず熱い吐息となって零れ落ちた。

「こうやって年を明かしたい。存分に陽芽を味わいながら」

存分に味わうって――一年以上も前に愛された日のことを思い出し、顔が熱くなった。

「なんだか久しぶりで、恥ずかしいです……」

私は育児、彼は仕事でドタバタしていたせいか、たまに志遠さんが帰国をしても、そういうことをしようという空気にはならなかった。

きっと志遠さんも、くたくたになっている私に無理をさせたくなかったのだろう、一度も求められることなく今に至る。

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