最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「ポリスレポート――盗難届だ。秘書に取ってきてもらった。これがなければ手続きが進まない。それから、君の帰りの航空券を再発行するよう頼んでおいた」

「……! どうもありがとうございます」

私が立ち上がり秘書の女性に頭を下げると、彼にうしろからファイルでぺしんと頭をはたかれた。

ファイルはペラペラなので痛くもかゆくもないけれど、振り向くと怖い目つきをした彼が私をじっと見上げていて、思わず「ひっ」と悲鳴を上げた。

「言っておくが、今回は特別措置だ。私に免じてあらゆる手続きを簡略化してもらっている。次からはこうスムーズにはいかない。わかったら二度と海外でパスポートを失くすな」

私がひとりでこの手続きをしようと思ったら、もっと時間がかかっていただろう。各所をたらい回しにされていたかもしれない。

「はい……申し訳ありませんでした……」

私がぺこりと一礼したとき、志遠さんの携帯端末が震え出した。

彼はすぐさま応答し、英語でひと言ふた言交わした後、通話を終える。

秘書に声をかけると、彼女は短く答えて部屋を出ていった。

「君のバッグが見つかったようだ。現場周辺の路地に落ちていたらしい」

「本当ですか!」
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