最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました

私は興奮してソファから腰を浮かせる。金目のものは奪われてしまっただろうけれど、バッグが残っていたということは、遺影も無事かもしれない

「秘書に取りに行かせた。君はここで残りの手続きをしながら待っていなさい」

私の手続きが完了する頃、彼の秘書が戻ってきた。手には私のショルダーバッグを持っている。

「サンキューソーマッチ!」

私がバッグを受け取りお礼を伝えると、彼女は柔らかく微笑んだ。

「Please don't mention it.」

見た目も美人だが声も美人だ。うっとりとする笑顔を浮かべて立ち去る。志遠さんが「『気にするな』だそうだ」と訳してくれた。

私はさっそく受け取ったバッグを開き、中身を確認する。

財布やスマホなど、金目のものはすべてなくなっていた。パスポートも同様で、違法な業者に売られてしまったかもしれないと思うとかなり怖い。

しかし――。

「あった!」

母の遺影は無事。写真の中から笑いかけてくれる母の姿に安堵し、私は黒縁の額ごとぎゅっと抱きしめた。

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