最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
志遠さんが人あたりのいい笑顔を作ったので、嫌な予感を覚える。

彼がその表情をするとき、相手はとんでもない大物であると、大使館で学習済みだ。

あのときは大使だったが、今度はどんな人物が登場するのか――。

志遠さんは男性と英語でいくつかやり取りを交わしたあと、私に紹介してくれた。

「彼はこの百貨店の総支配人だ。特別室へ案内してくれる」

総支配人――!

やはりそうきたかと眩暈がしてきた。世界的な老舗百貨店のトップからも、志遠さんはVIP扱いを受けているのか。

案内された個室は、ものすごく広いフロアの中央にソファとローテーブルだけが置かれていた。

なんだろう、この無駄に広い空間は。

ソファに座るとすぐにシャンパンやチーズ、フルーツなどが運ばれてきた。

シャンパンをいただいている間に、あれよあれよとスタッフが押し寄せ、私たちが購入を検討していたワンピースやパンプス、クラッチバッグ、アクセサリーがカートに乗せられ続々と運び込まれてきた。

周囲の空きスペースが商品で埋め尽くされていく。あっという間にオーダーメイドのセレクトショップができあがり、私はぽかーんと口を開く。

「あの……志遠さん」

「なんだ?」

「いつもこんな風に買い物されているんですか?」

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