最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「は、ハロー、アーサー。アイム、ヒメ キクミヤ。ナイストゥーミーチュー」

英語の教科書の一番初めに出てくる英文でなんとか自己紹介すると、アーサーはにこにこと笑ってくれた。

どうにか理解してもらえたみたい。いや、私の英語がつたないということを理解したのかな……?

次いで奥様とも握手を交わす。お淑やかで笑顔が素敵なご夫人だ。

店のスタッフを待たせていたこともあり、軽い挨拶だけで会話を終える。

老夫婦を見送った後、志遠さんはいまだかつてない固い声で今起きたことを説明してくれた。

「君に会えたことをとても喜んでいた。話の続きは週末のパーティーでゆっくり聞かせてくれと。君もパーティーに連れてきてほしいとのことだ」

私は「んんっ?」と眉をひそめる。

週末のパーティーとやらに……私も行くことになったの?

「私はただの路頭に迷う日本人です、とは説明しなかったんですか?」

「そんな時間もなかっただろう。不本意ながら、俺の恋人だと思われた」

いやいやいやいや、そこはきちんと否定してよ。私は胡乱気な眼差しを彼に向ける。

「っていうか、今不本意って言いました?」

「本意ではないから不本意だ。そこはどうでもいい」

「百歩譲ってどうでもいいとして、どうして否定してくれなかったんですか」

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