最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「否定をすると、それはそれで大変なことになる」

話を続けながら志遠さんは私を店の外へエスコートする。

ちなみに、相変わらずヒールが高くて足もとがフラフラだから彼にしがみついている。

まぁ、それがアーサーの誤解を招いたのではないかと言われれば、たぶんそう。

「彼は……その、なんというか、世話焼きなんだ。放っておくと縁談を持ってくる」

店を出ると、すでに正面に迎えの車が停まっていた。後部座席に促しながら、志遠さんはまいったような顔でため息を吐く。

「恋人がいるからといつも断っているんだが、ちょうど君がその恋人だと誤解してしまったらしい。というか、否定すれば浮気と受け取られる」

なるほど、たしかに浮気のイメージはよくない。騎士という名誉な称号を授かりながら実は女癖が悪いだなんて、一番ドン引きされるパターンだ。

「ついでに言えば、この店は由緒正しい店でね。アーサーのお気に入りなんだ。そんな店に本命の女性ではなく遊び相手を連れてきたと知られれば、何事かと大目玉を食らう」

「ええと……」

つまり、志遠さんは私の親孝行を手伝うために、伯爵御用達の超高級店に連れてきてくれたのだ。そして運悪く伯爵と出会い、誤解されてしまった。

そう考えると申し訳なくて、文句などとても言えない。

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