最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「あの……帰国しちゃったとかなんとか言って、パーティーの件はお断りを……」

「そんなことをしたら、彼は海を越えて君に会いにいきかねない。俺のことをよろしくと」

そんなに過保護な人なの!? と私は青ざめる。

「彼は俺を実の息子のようにかわいがっている。幼い頃、両親が日本とロンドンを行き来していたときに、ガーディアン――親代わりをしてもらっていたこともあるんだ」

志遠さんは後部座席に腰を下ろすと、額に手をあて深くうなだれた。

普段はあんなに堂々としている彼がここまで弱りきった姿を見せるなんて、余程の事態なのだなと私なりに推察する。

「陽芽。頼む。俺の恋人の振りをしてパーティーに出てくれ。その日だけでいい。ほとぼりが冷めたら別れたことにするから」

さすがに困惑して言葉に詰まった。

「私が恋人役をしたら、本物の彼女さんに申し訳が立たないんですが」

「安心しろ、今はいない」

「……そうなんですか?」

こんなにハイスペックな男性に恋人がいないだなんて、まずはそこに驚きだが、彼にふさわしい女性というのも相当限られてくるから仕方がないのかもしれない。

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