最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
そりゃあ、恩人が困っているんだもの、協力してあげたいとは思う。

でも私は英語がさっぱりだし、パーティーの同伴なんて荷が重すぎやしないだろうか。

しかも、アーサーは伯爵――貴族だ。なんの家柄もない私が恋人面をしていたら、嫌がるのではないだろうか。

「本当にいいんですか? 私なんかが恋人役をして。英語はできないし、美人でもないし、家柄もないし……」

「伯爵はそういうことにこだわる人じゃない。真実の愛さえあれば君が男でも許してくれるだろう」

「……理解のある方なんですね」

それはそれで、おいそれと引き受けていいものだろうか。

すると、志遠さんが真面目な顔で私に向き直った。

「ロンドンの滞在費用はすべて俺が払う。自由に観光してもらってかまわない。その代わり、君の週末を俺にくれ」

うっ……と私は眉をひそめる。これまで彼にいったいいくらお世話になっただろう。

フルコーディネートに高級ディナー、宿代まで借りることになりそうだ。

恐縮を通り越して土下座が地面にめり込むくらいお金を使わせてしまった。恩に報いらないというのも、どうなの……?

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