最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「……わかりました。協力します。でも、英語力には期待しないでくださいね?」

「ああ、もちろん。俺がリードするから、君はただ傍にいてくれればいい」

志遠さんは頼もしいことを言って、目もとを緩めた。

私はそのときまでにハイヒールで歩く練習をしておこうと、こっそりと決意した。



食事を終えると、志遠さんが宿まで送ってくれた。

私が泊まっているのは、ウエストミンスター地区にある、観光ガイドにも載っているような有名ホテルだ。

一応犯罪に警戒して、女性がひとりで宿泊していても狙われないような、名の知れたホテルを選んだ。

バッキンガム宮殿に観光することを見越して、徒歩圏のホテルを探したのだが、この周辺はみな高額。

唯一、この部屋だけ手の届く価格に設定されていて、迷わず予約した。掘り出し物というヤツだろう。

志遠さんは部屋の入口までわざわざついてきてくれる。こういうところはしっかり紳士である。

ありがとうございましたと、お礼を言おうとしたところで、彼がドアの枠に手をかけて端的に言い放った。

「一時間後に迎えにくる。それまでに荷物をまとめておいてくれ」

「……え?」

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