最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
私は意味がわからず、きょとんと首をかしげる。

「あの……どうして?」

「俺の保護下に置く」

「保護下……」

余計に混乱し、目をパチパチと瞬いてその単語を反復した。

「恋人をひとり、こんなホテルに泊めておいたと知られたら、アーサーからなんと言われるか。それに君はノックをされたら警戒もせずにドアを開けてしまうんだろう?」

私はうっと唸りをあげる。ノックされたら開けてはいけないの?

ホテルの中にまで敵が潜んでいるかもしれないなんて、考えたこともなかった。

とはいえ、今でも充分立派なホテルに泊まっている。これ以上、お世話になるのも申し訳ない。

「あの、大丈夫ですよ? 私、ドア開けないように気をつけますし。この宿、結構気に入ってますから」

私がおずおず説得すると、彼は一度目を閉じて黙り込んだあと、「いい部屋だな」と言ってあらためて部屋の中を見回した。

「陽芽。君はこのホテルに一泊いくらで宿泊している?」

「……ええと、日本円にして一万円くらいでしょうか」

「相場は倍以上だ。なぜこの部屋だけ安く設定されていたのか、気にならなかったのか?」

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