最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
私はトランクを引きずり、再び彼の車へ。待っていてくれた運転手に荷物を預ける。

車に乗ってたどり着いた場所は、ロンドンの西側に位置する高級住宅街の一角、テムズ川に近いエリアだ。

彼が案内してくれたのはこじんまりとした三階建ての一軒家。

こじんまりと言っても、東京であれば豪邸と言えるレベルの邸宅だ。

ただ、高級住宅街なだけに周囲の建物が立派すぎるからこじんまりと見えるだけ。

そして、てっきりホテルに連れていかれるのだとばかり思っていた私は、キョトンと目を丸くする。

「狭くて悪いな。タウン・ハウスみたいなものだ」

「タウン・ハウス?」

「歴史の話になるが、たとえばアーサーレベルの貴族となると、タウン・ハウスにカントリー・ハウス、マナー・ハウスと複数の屋敷を所有している。貴族は自身の領地と、政治や経済の中心であるロンドンを行き来することが多かったから、ロンドン滞在のための別宅をかまえることが一般的だった。それをタウン・ハウスと呼ぶ」

私は話の先が見えず、目の前にある真っ白な外壁の建物を見つめる。つまりここは貴族の別宅のようなもの?

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