最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
見上げれば艶やかな黒髪と漆黒の瞳。

日本人らしい顔立ちをした男性が、私の腕を掴んで立っていた。

今『待ちなさい』って言った?

この人、日本人かしら? そもそも私はどうして腕を掴まれたの?

「あの……なにか?」

「女性ひとりで路地に入るのはお勧めしない。荷物を盗まれただけでは済まなくなる」

流暢な日本語で返され、驚いた私は慌てて身を起こし、その人物をまじまじと観察した。

歳は私の少し上――三十歳くらいだろうか。

とんでもなく秀麗な男性で、彫りが深いながらもしつこさを感じさせない顔立ちは紛れもなく日本人のもの。

男らしくもあるが中性的で麗しく、身長は一八〇センチを優に超えていてモデル体型。

立派な三つ揃えのスーツを着ていて、育ちのよさと稼ぎのよさが見るからに伝わってきた。

「あの、でも……バッグを盗まれてしまって……早くしないと……」

犯人が逃げてしまう、そう焦り路地の奥に目をやると、三人の男たちが固まってこちらを眺めていた。

そのうちのふたりは黒い制服を着ている。

「さっきの警察官……!」

どうやら犯人を捕まえてくれたようだ。

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