最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
やがて、ダリルがミルクティーを淹れてきてくれた。トレイにはティーカップがふたつ。私の前と正面の席にそれぞれ置く。

ダリルは腰かけて肘をつくと「どうです? お口に合いました?」と食事をする私をにこにこと観察しながら、ミルクティーを口に運んだ。

「とてもおいしいです。それにこの紅茶、すごくいい香り……」

ミルクティーをひと口飲むと、たっぷりとしたミルクの甘みと、しっかりとした茶葉の香りが口いっぱいに広がった。

ミルクのポーションを入れたのではなく、手間をかけて煮出してくれたのだとすぐにわかる。

「すごくおいしい!」

「イギリスは紅茶の国ですからね。おいしくない紅茶なんて出せませんよ。あ、あとで茶葉、買いに行きます? お土産も必要でしょう?」

ダリルは日本語をペラペラと操りながら、気まぐれにミルクティーを口に運ぶ。

とても親しみやすい人だ。穏やかな笑顔は紳士だが、屈託ない口調は相手の警戒心を解きほぐす。

すっと懐に入り込んでくるけれど、厚かましさも感じない。人と距離を詰めるのが上手な人だと思った。

「あなたには英国をたっぷり味わってもらえって、シオンから言われてます。今日は存分に楽しみましょう」

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