最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
喜びに声のトーンを跳ね上げたが、黒髪の男性は私を制するように腕を引き、「いや」と鋭く言い放った。

警察官、そして犯人の男が路地の奥に向かっていく。

彼らがなぜ一緒になって歩いていくのか、私にはさっぱりわからなかった。

「……どういうこと?」

「偽警察官詐欺だろう。観光客、とくにアジア人は狙われやすい」

「詐欺……!?」

警察官が偽物だなんて考えもしなかった私は頭が真っ白になる。

そもそもどうしてこんなことになったのか。発端はあの警察官ふたり組だ。

呼び止められ、早口の英語でまくし立てられた。

言っていることがわからず、「Speak slowly,please(ゆっくり話してください)」とお願いすると、バッグを指差して『見せろ』とジェスチャーされた。

相手は警察官なので無視するわけにもいかず、バッグのストラップを肩から外した瞬間、飛び込んできたスリに丸ごと持っていかれてしまったのだ。

もしかして、グルだったってこと……!?

「じゃあ、余計に早く追いかけないと!」

腕を振りほどこうともがくと、「落ち着け」と余計に強く引き寄せられた。

「襲われに行くつもりか? もっと危機意識を持て。ここは日本じゃないんだ」

冷静になって考えてみれば、その通り。人気のない路地で男性三人に囲まれて、無事でいられる保証はない。

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