最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
頃合いを見計らい、私はお土産にと買ったマグカップの小箱を差し出す。

「あの、これ。お土産です」

彼は少し驚いた顔で「俺にか?」と小箱を眺める。

「感謝の気持ちを込めて。写真は……その、かなりはしゃいでいるように写ってましたが、あなたへの感謝はずっと感じていたんですよ? 本当です」

彼が包みを開けると、オレンジとグリーンが色鮮やかな花柄のマグカップが出てきた。

彼は少し不思議な顔をしながらも、マグをいろいろな角度で眺めて、最後にふっと息をつく。

「ありがとう。使わせてもらう」

「よかった。あ、お金は日本に帰ったらちゃんと払いますから!」

慌てて言い添えると、彼はくすりと小さく笑って、ソファから立ち上がった。

「紅茶でも飲むか」

「あ、だったら、私たくさん茶葉を買ってきたので、ひとつ開けてみていいですか!?気になる茶葉があるんです」

私は客間に置いておいた土産の中からリーフ缶を取ってくる。

「オレンジペコって、オレンジ味じゃないらしいんですよ、知ってました!? ……ってずっと英国にいる志遠さんなら知ってるか……」

私がセイロンのオレンジペコを持っていくと、彼は意表を突かれたのか、お腹に手をあててプッと吹き出した。

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