最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
なんとか平常心を取り戻そうと苦心し、俺は陽芽をパブに案内した。観光地としても有名で、イギリスらしい重厚な歴史を体感できる店だ。

彼女は喜んでくれたようで、写真の中で見せていた笑顔を俺にも見せてくれた。

ああ、彼女はこういう人だ。

不思議と平静を取り戻し、彼女と冷静に向き合えるようになった。

『君の恋人はどんな人だ?』

彼女の恋人とやらには興味があった。こんな隙だらけで手間のかかる女性と付き合う男とは、いったいどれほど肝の据わった人物なのだろうかと。

勤め先の企業を完全に洗ったにもかかわらず、それらしい人物が見つけられなかったことも気がかりだ。その男は本当に実在するのだろうか。

陽芽が見栄を張って嘘をついているのでは?とも疑ったが、彼女はそんなことをする人間ではなさそうだ。

そもそも、陽芽に嘘はつけないだろう。つかれても一瞬で見破る自信がある。

そして、彼女の〝自称恋バナ〟を聞いていくうちに、それは本当に恋人なのだろうか?という疑問が湧き上がってきた。

百万渡したと説明されたところで、いやそれは詐欺だろうと確信めいた考えが頭をよぎる。

――捜索範囲を広めた方がよさそうだ。これまでとは違った方面に。

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