最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
英国だけでなく、母国でも騙されているとは、なんて女性なのだろう。

あまりにも嘆かわしくて、額に手をあて『What a pillock(なんてバカなんだ)……』と、学生時代には禁止されていた、らしくないスラングをつぶやいてしまった。



俺やダリルが通っていたパブリックスクールは指折りの名門校で、現代では数少ない全寮制の男子校である。

生徒のほとんどは貴族や資産家の子どもたち。俺とは格が違う。

御子神家もここイギリスで事業に成功し、そこそこの名声と資産は持っていたが、それでも歴史ある名門校に招かれるほどの家柄とはいえなかった。

なぜそんな場所に通えることになったのかと言えば、俺の祖父が日本の政界に強い権力を持っていたこと、加えて、俺が特待生として招かれるに遜色ない学力を有していたこと、そしてなにより、祖父がスクールに多額の寄付金を支払ったことだ。

当時、日本に住んでいた両親は、俺がひとり国を離れ寄宿学校に入学することを『かわいそうだ』と大反対した。

しかし、祖父は自身の見栄と、イギリスで確固たる地位を築く足掛かりとするため、俺をひとり異国の地に放り出した。

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