迷彩服の恋人
第四任務*駐屯地祭へ行こう!
*私と土岐さんの胸の内
梅雨明けも秒読みの7月上旬――。
「もう別れようかなぁ…。こんなに会えないなんて聞いてないし。」
自席デスクの〝隣の島〟のデスクから、花村さんのそんな声が聞こえてくる。
昼休憩直前でも、私語は慎みなさいってば…!
また言ってるし…。古川さん、お気の毒すぎる。
「私も…秒読みかな。」
朝香先輩……。麻生さんもお疲れ様です。
まだあの合コンから半月じゃない…!
あの後3日間ぐらいはウキウキしてたくせに……。
「〝もっちゃん〟は?土岐さんと何かないの~?」
ニヤニヤしながら聞いてくるの、やめてもらえます?先輩。
「朝香先輩、もう少しでランチなので…書類仕上げちゃって下さい。…先輩、人に興味あったんですね。自分の恋愛しか興味ないのかと思ってました。私の話も全然聞いてくれないですし…。」
ついに皮肉っぽく言ってやった。
本当は、堪忍袋の尾なんて…もうとっくに切れてる。
もう〝引き立て役〟になんて、ならない。
理不尽な我慢は…もうしないって、土岐さんと約束したから――。
「まだ怒ってるの?無理やり連れてったのは、ごめんって!…でも、行ったおかげで土岐さんと再会できたんでしょ?」
「再会して、助けてもらった時のお礼言っただけで…残念ながら何もないですよ。私…恋愛に対してはビビりなので、連絡先…聞けなかったですし。…さて。〝桧原主任〟、チェックお願いします。」
まぁ…嘘だけど。
私は、隣の席に居る朝香先輩から離れたくて…結花先輩のデスクへ書類チェックのお願いをしに向かう。
「はい。〝望月さん〟ありがとう、相変わらず仕事早くて助かるわ。…あっ、それから【新商品開発コンペ】の案はどう?チームのメンバーから『望月さん、悩んでるみたいで…。』って話上がってきてるけど。相談乗ろうか?」
「はい。お願いしたいです。」
結花先輩、意味深な顔してる…。
これは、【コンペ】以外の話もありそう…。
「ランチデートしましょ。」
「〝主任〟、喜んで!」
そこへ朝香先輩や花村さんが「私も!」と、すごい勢いで私達の元へやってきたけど…「私のメンツ潰すような人のために、ランチも合コンもセッティングしない!そこ間違えないでね!」と見事に説き伏せ、話に乗らない先輩。
その一言でフロアにいた全員が、"今回の合コンも失敗したのか"と察したのだった――。