迷彩服の恋人
「こうやって、この加熱袋…ヒートパックの中に水と薬剤を入れて蒸気で温めます。なので火が使えなくても作れます。約20分…このままで待ってて下さい。」

「なるほど。水と薬剤で化学反応が起きる仕組みでしょうか?」

「そうですね。」

よく考えられてるなー。
でも、反応を起こして発熱させるんだから…ある程度時間はかかっちゃう。

「私も、主任になる前は何度も考えてみたんだけど…時間短縮の方法が出てこなかったのよね。1パックあたりの量減らせば時間は縮められるけど…。」

「物の個数を増やせば、加熱袋と加熱剤の数も増える。コスパも良くないし…ゴミの問題だってある…。うーん、難しいですね。」

今書いたメモを見ながら、私は頭を捻る。

「望月さん、もしかして…僕がメッセージで言ったから考えてくれてるんですか!?」

言ってなかったから驚いてるな、土岐さん…ふふっ。

「はい、実は。早く温かいご飯が食べられるなら、それに越したことはないですし。」

そんな話をしている時…少し離れたテーブル席から子供の声が聞こえてきた。

「おとーさん、僕のカレーまだ食べちゃダメなのー!?」

「あれは…中原2佐ん()の将太…。」

「あー。中原2佐、大変そう。大人でも20分ってただ待ってるだけだと長いもんなー。子供は退屈だよな、腹減ってるし…。」

「あっ、そうだ。土岐さん、ちょっと協力して下さい。」

「えっ?あっ、了解です。」

「えっ、都ちゃん?」

先輩と志貴さんの驚く声を、私は背中で聞いた。

そして土岐さんに中原さん一家の元まで連れて行ってもらい…保護者に事情を伝えて、将太くんにこう声を掛けてみる。

「こんにちは、将太くん。ご飯あったかくなるの待ってるんだ。お姉ちゃんも待ってるの、一緒だね!将太くんはいくつ?」

「5歳。」

「5歳なんだね。将太くんは…"1,2,3"って、いくつまで数えられる?」

「30まで。」

「30までね!じゃあ、"30までを2回"一緒に数えてみよっか。」

ここまで言うと、ご両親と土岐さんには私の考えが分かったようで…一緒に数を数えてくれる。すると、将太くんのお兄ちゃんも加わってくれた。


子供が退屈しない工夫…これだ!!


「ほんとだ!数、数えてたらできてる!ブクブク止まった!」

一連の流れが終わった時、中原さん夫妻からお礼を言われる。
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