迷彩服の恋人
「でも残念でしたね、サークルの同窓会。」

「いえ。実は…正直行きたくなかったので、私的には怪我の功名というか…。今回の幹事の子とは人並みには付き合いましたけど、苦手だったんです。」

「あっ、そうだったんですか。それでお電話をされていた時も(にご)してたんですね。」

「そうですね。……そういえば。私と会う前、どこかへ向かわれている途中だったのでは?今さらですけど…ご用事は大丈夫だったんですか?」

「あぁ。それなら…問題ありません。寮に戻るだけですから。」

今どき、寮生活なんて珍しい。学生には見えないけど…。

「寮生活なんですね。…そうだ、先ほどからタイミングを逃して名乗っていませんでした。私、望月 都と申します。」

「あっ、これは大変失礼しました。僕は――。」

ヴー、ヴー、ヴー…

「…ん?あっ!上司からの連絡なので出ないと。少し席を外しますね。」

「あっ、はい――。」

私は反射的に返事したものの、彼はもうすでに外に出ていた。

今日…日曜日よね?休日に上司から電話?
それに寮生活って言うし…何をやってる人なんだろう?

そんなことを考えてたら、戻ってきた彼が私に早口でこう言う。

「すみません、望月さん。ちょっと寮内で当番を代わってほしいという人間がいまして…。すぐに帰らないといけなくなりました。」

「そうなのですね。私はもう落ち着いていますし、大丈夫ですから。どうぞお戻りになって下さい。」

「ご家族が到着するまで一緒にいると言っておきながら、本当に申し訳ありません。ご家族によろしくお伝え下さい。そして早く回復されますように。…では、失礼します。」

こうして、彼は帰っていった。

――あっ! 彼の名前聞きそびれちゃった…。

でも、きっと〝偶然出会っただけの人〟…。
そんなに気にしなくてもいいのかもしれない。

でも、だからこそなのか〝彼〟のことが少し気になる――。

物思いに()けていると、迎えが来たのでそのまま帰宅した。
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