迷彩服の恋人
「まぁね…。あんまり紹介したくないんだけど……。都ちゃんには〝彼〟の時間ができたら絶対に紹介するわよ。〝彼〟も『結花の大事な後輩さんには会ってみたいな。』って言ってるからさ。」

「じゃあ、やめればいいんじゃ…?……えぇっ!?あ、ありがとうございます!お、恐れ多い!」

「あはは。相変わらずかわいいわね。…そう思うでしょう?…ただね。男性陣がノリノリだからやるわよ、たぶん。」

「そんなものなんですかね…?」

「大丈夫。何かあっても、『都ちゃんには声掛けるな。』って言っておくから。"おうち時間"満喫してて。ただ、私の愚痴は聞いてね。」

「あはは、はーい。」

この時の私は…"自分には関係ないし…。"と思って、どこか上の空で聞いているだけだった――。



――はぁ…。押し切られたら断れないのよねー。
結花先輩の〝彼氏さん〟に会えるのは嬉しいけど…。

今は、先輩が今日の会場にと手配した洋風居酒屋に向かう電車の中――。

私が橋本さんのピンチヒッターで合コンに駆り出された理由は、彼女が高熱で(たお)れていて、押しが強い朝香(あさか)先輩と花村さんに強制連行されたから。

「望月先輩って、何か運ないですよねー。男の人に会うって時にコンタクト入らないなんてー。」

「そうね、ほんとに…。」

「花村さん?望月先輩にマウント取るなら、この合コン無しにしてもいいのよ。大体、あなたの業務態度目に余るものがある。あんまり酷いと査定落とすからね?」

ありがとうございます、結花先輩。

「でも、〝もっちゃん〟もそろそろ〝3次元の男〟にいった方が良いのは確かよねー。」

「そうですよ、望月先輩は(もと)が良いんですから。もったいない。アニメキャラに恋とか言ってないで、リアルのメンズに向かいましょ。」

栗原さんも朝香先輩も、余計なお世話ですー!

…帰りたい。

心の中の毒を出さないように耐えていると、私の心境を察した結花先輩が「気にしちゃダメよ、来てくれてありがとう。ところで――。」と隣へ来て話題を振ってくれた。

本当にありがたい…。

先輩との会話に集中していたら、お店に着いていた。



「ごめん、隼人(はやと)。待たせちゃった。」

「結花、お疲れ様。いいよ、金曜だし…会議だったんだろ?」

この人が先輩の〝彼氏さん〟か……!
顔はインテリ系のイケメンで濃くないのに、体型は筋肉質なんだ…。

どうやら、先輩が連絡したタイミングで外に出てきてくれたみたい。
……優しい人だな。


そういえば、〝助けてくれたあの人〟も筋肉質だったなぁ…。
――えっ、ちょっと待って。私、何で〝あの人〟のこと思い出してるの!?


顔が先輩好みなのは納得!でも体型の好みは意外だった。


そして店内の奥のスペースに行ってみると、数人の男性がテーブルを囲んでいた――。

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