アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
「四葉、お待たせ」
「うん。
揚羽くん、また夜に電話するね」
「うん」

鳳雅が迎えに来て、車に乗り込んだ。
後ろを振り返り手を振る。

揚羽も車が見えなくまで、手を振っていた。

「あんま時間ねぇし、近くの公園に行こ?」
「うん!じゃあ、何か飲み物買って━━━━━」
「いらない」

「え?鳳雅くん?」

「俺が欲しいのは、四葉だ」

「え?鳳雅くん、何言って━━━━━」
「好きなんだ」
「え?」
「四葉が好きだ」

「え……また、冗談━━━━━」
トン…と、鳳雅に窓に追い詰められた。

「四葉、俺と結婚しよ?」
「鳳雅く…本気、なの…?」

「本気だよ。
揚羽と別れてよ。それで、大学卒業したら結婚しよう。俺は親父の会社に就職することはもう決まってる」

「揚羽くんと、別れる?」

「そうだ」

「━━━━━ない…」
四葉は、ネックレスを握りしめた。
「四葉」
「できないよ!」
「四葉…」
「私は、揚羽くんがいい!ごめんね、鳳雅くん。
ごめんなさい。
…………市ノ瀬さん」

「え?あ、はい!」

「車、止めてもらえますか?」

「え?」
ゆっくり脇道に止める、市ノ瀬。

「ごめんね、鳳雅くん。
婚約は、私が破棄する。
大丈夫。鳳雅くんには、傷つかないようにするから。ここからは、一人で帰るね」
そして四葉は、自分で後部座席のドアを開け降りた。

慌てて鳳雅も降り、四葉を追いかける。

「待てよ!四葉!!」

「今までありがとう!!
ごめんね、鳳雅くんの気持ち全然気づかなくて………
私鈍感だから、今まで沢山傷つけてたんだね…
ごめんなさい」

「四葉!!お前、何処に行こうとしてる?」

「鳳雅くんは知らなくていい。
お父様とお母様には、正直に言って。
“四葉が無理矢理車を降りて、何処かに行った”って」



『━━━━━でも、賭けってどうする気?』

『俺は……四葉にはヤクザの女ってのは、無理だと思う。
だって、俺のチームの奴等でさえ、まともに目を見て話せないだぜ。
いつも揚羽か俺にしがみついてただろ?』

『そうだね』

『だから、四葉の覚悟が知りたい』

『覚悟?』

『四葉が、ヤクザの女になるってちゃんと覚悟ができるなら……本当の揚羽を知っても、揚羽の傍にいるってなら……それ程の想いがあるなら、俺はきっと諦めることができそうなんだ』

『鳳雅…』




「四葉!!」

鳳雅は、四葉の“覚悟”を見た気がした。

でも━━━━━
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