アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
帰りの車内。

「ごめんな、四葉」
「え?どうして、鳳雅くんが謝るの?」
「俺の仲間のせいで……」

「謝らないで?
大丈夫だから!
鳳雅くんのおかげで、揚羽くんが止まってくれた。
ありがとう!」

四葉が頭を下げる鳳雅の頭をゆっくり撫でた。

その小さな手を掴んだ鳳雅。
自分の頬に当てた。

「なんで、あんな奴が好きなの?」
「え……鳳雅…く…」

「俺なら…あんな恐ろしい思い、四葉にさせないのに……!」

「鳳雅くん…」

四葉は、切ない鳳雅の言葉と声に手を振り払えずにいた。


屋敷に帰りつき、部屋のベッドにダイブした四葉。
先程の揚羽が、脳裏に蘇った。

言葉では表現できない恐ろしい雰囲気。
淡々と“死”を口にし、相手の言葉を一切受け入れない冷たい視線。

「私にはあんなに優しいのに……」
「揚羽様ですか?」
「え?」

声のする方に、原内がいた。
「すみません。お声をかけたんですが……」
「あ、ごめんね……」
ゆっくり起き上がる、四葉。

「あれ?四葉様、ネックレスはどうされたんですか?」
「え?ネックレス?」
「確か、今朝はつけてましたよね?」
「え………」

━━━━━━━━!!!?
見ると、ネックレスをつけていなかったのだ。

「嘘!!?」
「四葉様?」

(何処で……!!?)
考えられるのは、一ヶ所しかない。

文人に押し倒された時だろう。

「私、探してくる!!」
「え!!?四葉様!!?」

凄い勢いで部屋を出た四葉は、そのまま玄関に向かった。

「四葉様!!ダメです!!もうすぐ、お父様も帰って来られるんですよ!?」
「嫌!!あれは!!
あのネックレスは、大切な……!!!」

「何してるの?騒がしい…!!」
「あ、奥様!!?」
「お母様!すぐ、帰ってきますので、外に出してください!!」
「ダメよ!」
「お願い!ママ!!大切な物なの!!」
必死に懇願する、四葉。

「もうすぐ、パパが帰ってくるわ。
パパにお願いしなさい」


「━━━━━ダメだ。こんな時間に外に出すわけないだろ!」
四門の帰宅後、懇願するが案の定反対される。

「お願い!!大切なネックレスなの!」

「パパが新しいのを買ってやる!」
「それじゃダメなの!!」
「どうして?」
「あれは、あげ…」
「ん?」

「…………鳳雅くんが買ってくれた大切なネックレスだから!」

「………」
「お願い…パパ……」

「………だったら、パパと行こ?」
少し考え込み、なんとか了承を得た四葉。
四門と二人で、鷹寅の店に向かった。

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