アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
「ううん。何でもねぇ……」

それから二人は、街の方へ出た。
四葉はトイレに行き、鳳雅の元へ戻ろうとする。

小走りで向かっていると、突然グッ!!と手を引っ張られた。

「キャッ!!?」
そして、そのまま抱き締められた。

顔を見なくてもわかった。

「揚羽くん!」
「フフ…やっと、触れられた」

「揚羽くんも来てたの?」
「当たり前だ。
鳳雅だけに、幸せな思いをさせない」

「じゃあ、一緒に━━━━━━」
「それはダメだ」
「え………どうして?」

「九重の部下がうろついてる」

「え?お父様は来てないよ」

「……ったく…九重のおじさんの方が、よっぽどヤクザみたいだ」

「じゃあ……お父様は、私が内緒で揚羽くんと会わないか監視してるってこと?」

「そうだな」

「嘘……」

「だからもう少しだけ、四葉を充電させて?」
「うん…」
四葉を抱き締める、揚羽。
四葉も、揚羽にしがみついた。

「四葉」
「ん?」
「このまま、聞いて」
「うん」

「もし今、僕が都筑組に入ることになったら……
どうする?
僕のところに来てくれる?」
心なしか、揚羽の声と身体が震えていた。

「え………?」
鳳雅も同じようなことを言っていた。

「四葉、四葉、四葉……好きなんだ。
どうしようもなく………
本当は、四葉を諦めるなんてできない……!」

「どうゆう…ことなの…?」


「じぃちゃんの余命が、短いらしいんだ。
じぃちゃんが死んだ場合、揚羽は早々に都筑組に入ることになってしまう。
そうなると、俺と揚羽の計画も崩れる」

いつの間にか、鳳雅がいた。

「私は……」

「四葉、お願い。
僕を受け入れて………!」


本当に、今揚羽くんが都筑組に入ることになったら……

私は、どうするのだろう。


両親の反対以前に、揚羽くんの傍にいれるのだろうか━━━━━


四葉は、揚羽の切ない視線と言葉に答えられずにいた。

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