アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
トイレを出ると、揚羽と鳳雅が並んで待っていた。

とにかくカッコいい、揚羽と鳳雅。
「でも羨ましいなぁ」

不意に千歌が言った。
「ん?千歌ちゃん?」

「ほら、揚羽様と付き合いしてて、鳳雅様は婚約者。大学の二大イケメンを一人占め!(笑)」
「そう…だよね……」

「……って、四葉にしか無理だけどね(笑)
二人と並んで歩くことができるのは」
「そうかな?」
「ん?」

「私は、二人の隣にいてもいいのかな?」

「当たり前でしょ!?
二人が、四葉の傍にいたい、いて欲しいって思ってるんだから!自信持ちな!!」

微笑み言った千歌に、四葉も微笑んだ。

「フフ…」
「ん?何?」
「四葉には、切ない顔は似合わないよ!
四葉は、何をしてても可愛いけど……
笑顔が一番可愛い!」
「フフ…ありがとう!」

それから三人は、一度大学を出て近くのレストランに昼食に向かった。
午後の講義まで、時間があるからだ。

「揚羽、四葉。
俺は、この後サボるから」
「え?鳳雅くん?」
「揚羽、後から鷹寅(たかとら)んとこに四葉連れてきて!そこから俺が家まで送るから、あとよろしく!」

「ん。わかった」
後ろ手に去る鳳雅に、無表情で返事をする揚羽。

「気を遣ってくれたのかな?」
「そうだね」
「やっぱ、鳳雅くん優しいね!」

「━━━━━惚れた?」

「へ?」
「鳳雅に惚れたの?」
「揚羽…くん…?」
揚羽の顔が近づく。

「四葉は、僕の四葉だよ」
「うん…」
「だから、僕だけに惚れてよ」
「うん、揚羽くんだけだよ」

「四葉を手の中に持ってるのは、この僕。
だから四葉は、僕だけに幸せをくれないとダメ!」
更に顔が近づき、口唇が重なりそうになる。

人がたくさん行き交う、街中。
思わず、揚羽を押し返す四葉。

その手をすかさず、揚羽が掴んだ。

「この手、何?」
「え?だ、だって…恥ずかしい…////」

「四葉」
「え?」
「僕達は、普段少しの時間しか一緒にいれない。
だから一緒にいる間は、僕を拒んじゃダメだ」

そう言って、そのまま口唇が重なった。

レストランに着くと、オーナーが出迎えに来る。
「都筑様、九重様。
いらっしゃいませ、こんにちは!」
丁寧に頭を下げてくる。

「ん」
「こんにちは」
相変わらず無表情な揚羽と、微笑む四葉。

二人は奥のカップル席に通された。
並んで座り、メニューを開く。

「どうする?四葉」
「いつものおすすめにする」
「ん。オーナー、おすすめね」

「かしこまりました」
「あ、四葉は━━━━」
「少なめですよね?」
「ん。よろしく」

頭を下げ去っていくオーナーを見送り、四葉は揚羽の肩に頭を乗せ腕にしがみついた。

「フフ…四葉が、甘えてる。
可愛い…!」
揚羽は嬉しそうに頭を撫でたのだった。
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