アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
「どうして、揚羽くんじゃダメなの?」
「ん?」

「私は、揚羽くんじゃないとダメなのに」

「僕はヤクザの息子だからね。
九重の姫が、ヤクザの息子と関係を持つなんてあり得ない」

「でも!鳳雅くんも揚羽くんと同じ孫だもん!」

「そうだね。でも、叔父さんはお祖父様とは絶縁してるから。だから叔父さんは、早瀬に婿に入ったんだよ。鳳雅はお祖父様が好きだから、都筑の屋敷に住んでるけど……
まぁ僕も、鳳雅が家にいてくれるから、色々四葉のことかげからしやすい。
だから、助かってる。
鳳雅がいなかったら、僕は壊れてたかもだから」

「え?」
四葉が頭を上げ、揚羽を見上げる。

「僕は、四葉のことずーっと大好きなんだ。
ずっと四葉を嫁さんにすることだけを考えて生きてる。僕は四葉と二人で生きていきたい」
揚羽は四葉を真っ直ぐ見て言う。
そして更に、続けた。

「大丈夫。最終的には、四葉を拐って何処か遠くに連れてくから。
四葉じゃないとダメなのは、僕の方だよ」

四葉は、揚羽の言葉が身体の中に浸透するのを感じていた。


食事が済み、講義までまだ時間がある為、街をゆっくり歩いている二人。

「あ!揚羽くん、見て!
アゲハ蝶!可愛い~」
ジュエリーショップのショーウィンドウに、飾っているアゲハ蝶のチャームのついたネックレスだ。
宝石が散りばめられていて、キラキラ光っていた。

「ほんとだ」
「綺麗…」
「プレゼントするよ」
「え?でも…」
「欲しいんでしょ?」

「うん…」
「鳳雅からって言いな」

「………やっぱり、いらない」

「どうして?」
「アゲハ蝶は、揚羽くんを想像させるし……」
揚羽の服を握りしめ呟いた。

「鳳雅の“鳳”も、アゲハだよ」

「でも、アゲハ蝶は揚羽くんだもん!」
「僕としては、どっちでもいいよ。
四葉が、僕のプレゼントした物を身につけてくれることに意味がある」

「だったら━━━━」
「ん?」
四葉は背伸びをして、揚羽の耳に口唇を寄せた。

「揚羽くんと、ペアの物身につけたい」


「━━━━━綺麗…こんなのあったんだね!」
「そうだね。でも、これなら堂々とつけていられる」

二人の首に光る、四葉のクローバーのネックレス。

「揚羽くん、ありがとう!
大切にするね!」
四葉は、ネックレスを握り微笑んだ。

「うん」
「それに…」
「ん?」
「揚羽くんとお揃い…////」
「うん…!」

そして大学に戻り、講義中もずっとネックレスに触れていた。

「そんなに喜んでくれるの?」
「うん!だって、揚羽くんの代わりみたいなモノだし」
鳳雅の所へ向かう車内でもずっと触れていた、四葉だった。
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