アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
「━━━━━なので、四葉とのデートの許可をください。もちろん、18時までには安全にお返しします」
鳳雅は、四葉の両親に頭を下げる。

「………わかった。いいだろう」
父親・四門(しもん)が静かに、頷き言った。

「お父様?いいの?」

「あぁ。四葉はもう成人を迎えたからな。
もちろん、外泊はダメだ。でもデートくらい許してやらないとな!それは、ママとも言ってたんだ」
四葉に微笑む、両親。

「ありがとう、お父様、お母様!」


「━━━━━鳳雅くん、ありがとう!」
「いや。
明日、揚羽にも会わせてやる。
でも、俺ともデートして」
「うん、わかった。じゃないと、怪しまれるもんね!」

「………ほんっと、お前って…真っ白だな……」
「え?」

鳳雅の魂胆なんてまるでわかっていない、四葉。
目をパチパチさせて見つめていた。


鷹寅のマンションに戻った鳳雅。
「ただいま」
「おかえり。四葉を安全に帰した?」
「あぁ」
「ん。ありがと」

「揚羽、大事な話がある。屋敷に帰ろ」

「うん。
あ、お前等。いい?もう鳳雅に迷惑をかけるな。
それは結果的に、四葉に迷惑がかかる。
僕からこれ以上、四葉を奪うな!」
鷹寅達を鋭く睨み付け言い、マンションを出たのだった。



「━━━━━揚羽は、本当に“四葉だけ”なんだな」
帰りの車内。
鳳雅は窓の外に視線を向けたまま、ポツリと言った。

「当たり前。
四葉がいれば、何もいらない」

「そう。
……………なぁ、揚羽」
「ん?」

「俺、四葉が好きだ」
今度は揚羽に向き直り、はっきり言った。

「………は?」

「ずっと…気づかない“フリ”してたけど、やっぱ好きだ。四葉のこと」

「だから?」
揚羽の雰囲気が変わり、重く圧迫されていく。


「俺と、賭けをしないか━━━━?」
そんな揚羽に、鳳雅は淡々と話す。

「は?」

「勝った方が、四葉を手に入れることができる。
負けたら、きっぱり諦める」

「でも、四葉の気持ちはどうなる?
確かに世間的に認められてるのは鳳雅だが、四葉の心は僕にある」

「お前が負けたら、お前が四葉を振るんだ。
後は俺が、ちゃんと支える」

「でも、賭けってどうする気?」


「━━━━━━━━━」


鳳雅の言葉に、揚羽は目を見開いた。

「な?それなら、四葉を手に入れられると思わね?
俺も、揚羽も。
これで俺達は、同じスタートラインに立つことになる」

「…………わかった」

「でさ。明日、四葉とデートの約束取りつけた」
「え?」
「もちろん、揚羽にも会わせてやる。
行きと帰りを俺が送り迎えすりゃあいいだろ?」

「鳳雅…お前……」


「明日、四葉にコクろうと思う。
賭けのことは、四葉に内緒な?
後は、四葉の“覚悟”で、俺達の未来が決まる」
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