狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
とうとう駒である役割を果たすときがきたのか。
突然のことに意表を突かれはしたが、別にそれ以上の感情は抱かなかった。
もうすぐ二十歳を迎えることだし、そろそろそんな話が舞い込んできても可笑しくないとは思っていたのだ。
現実に引き戻され、艶めく漆塗りの座卓を挟んだ上座に位置する両親の元へと視線を向ける。
正面の父と目が合った瞬間、あからさまに気まずそうな顔をして視線を逸らされてしまい、胸がツキンと痛んだ。
別に今更、父に何かを期待してたわけではない。けれど心のどこかで、何かを期待していた自分がいることに気づかされた。
そんな自分のことが不憫に思えてならない。
鼻の奥までがツンとしてくる。美桜は泣き出したりしないように、膝の上の拳にぐっと力を込める。
対して薫は、やっと厄介払いができると言わんばかりに、嬉々とした表情で見合い相手の釣書と写真とを父に手渡すと、その相手がどういう人物かの説明を朗々とはじめた。