狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
「父の古くからの友人の息子さんなんですけれど。もうすぐ元外務大臣を務めていらっしゃったお父様の地盤を引き継いで、次の選挙に出馬するんですってーー」
薫の話によると。その相手は大物代議士のご子息で、父親の跡を継ぐために若い頃から勉強や仕事に忙殺され女性と交際する暇もなかったとかで、もうすぐ四十歳を迎えるに当たり、結婚相手を探していたらしい。
つい先日、薫がたまたま所用で実家に帰省した折に父の友人と居合わせ、その際に美桜の話題が出たらしく。家元のお嬢さんなら間違いないと、トントン拍子に話が纏まったということだった。
薫曰く、将来有望な代議士の元に嫁げば、経済的にも安定しているし、なにより、この長い歴史を誇る華道の流派である清風も安泰。
家にとっても、美桜にとっても、これほどの良縁はないのだという。
ーー四十歳……って、そんなおじさんと。
薫の話を耳にしての美桜の第一印象は、そんなものだった。
ついさっきまで父の反応に少なからずショックを受けていた美桜だったが、そんな感情など一気に冷めていく。
今度は違った意味で大きな衝撃を受けてしまっている。
幼い頃から、この家をもり立てていくための駒として育てられてきたとはいえ、まさか二回り近くも年の離れた相手の元に嫁がされるとは夢にも思わなかったからだ。