狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
その仕草が途轍もなく愛らしく、それとは対照的に、女性らしい肉感的なスタイルとの、アンバランスな対比が男心を擽っていようとは、美桜にその自覚などあるはずもなく。
「……無意識にもほどがあるだろ。それにしても、なんなんだ、そのギャップは」
依然、尊の様子に困惑中の美桜の眼前で、項垂れている尊がぶつくさと独り言ちる様を不思議な心持ちで眺めていることしかできないでいる。
ようやく尊が垂れていた頭を上げてきた。かと思った次の瞬間には、背後のガラス製の壁へと追い込まれてしまう。
「ーーヒャッ!?」
突如、背中に感じたヒヤリとした冷たい感触に慄き目を閉じる。
身を竦めた美桜が再び目を見開いた先には、ガラス壁に追いやった美桜を包囲するようにして両側に手を突いて、妖艶な微笑を湛えている尊の端正な相貌が待ち構えていた。
ーーこ、この状況、ドラマと同じだ。
呑気にそんなことを思ったまではいいが、ドラマとは違いお互い素っ裸の上、未だこの距離に慣れず、ドキドキと高鳴る鼓動は加速の一途を辿っていく。
そうと知ってか知らずか、尊はぐっと距離を詰めてきて、吐息のかかりそうな鼻先すれすれの距離から強い眼差しで見据えてくる。
「言ったからには、自分の言葉には責任をとってもらう。いいな?」
尊の言葉は、相変わらず、有無を言わせないというような、とても傲慢なものだった。
さすがは極道組織のナンバーツーだと思わせるほどの、威圧感だってある。
昨夜だって、散々恥ずかしい事をされてしまったし、意地悪な言葉攻めだって何度もお見舞いされている。
けれど、どんなに傲慢な物言いであっても、美桜が本気で嫌だと思うことは決してしなかった。