狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

 それをぐっと堪えているところに、不意打ちのように、尊から頬にチュッというリップ音と共に、ムッとした美桜のことを宥めるような可愛らしいキスをされ。

「そんなに怒ると、可愛い顔が台無しだぞ」

 驚いた美桜が放心している隙を狙ったように、ご機嫌を取るような言葉まで囁かれてしまった。

 ーーな、何? 急に。さっきはあんな意地悪なこと言ってきたのに。一体どういうこと?

 さっきまで泣きそうだった美桜は、驚きのあまり困惑状態だ。

 そこにふと、ある可能性が脳裏に浮上してくる。

 そういえば、昨夜も、『愛らしい』とかなんとか言われた気がする。

 ーーこれってもしかして、女性を褒めて自分の思い通りにするための常套句なのでは。

 こういうとき男性は、女性をその気にさせるために褒めるらしいし、きっとそうに違いない。

 そう思うのに……。そんな些細な言葉であっても、尊に言われると、無性に嬉しいなんてことを思ってしまう。

 ーー悔しいが、きっと、これが惚れた弱みというものなんだろう。

 人を好きになるということが難儀なことだということを美桜が実感している最中、再び尊に動きがあった。
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