狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
だがさっきまでの余裕ありげな態度はどこかに消え失せているように見える。
そんなことを思ってる間にも、尊はなにやら切羽詰まったように、美桜に縋るようにして抱きついてきた。
そうして耳元に顔を埋めてくると、やっぱり余裕なさげな声音で囁きかけてくる。
「怒らせておいて悪いが、余裕がない。手伝ってくれないか? 約束通り、最後まではしない」
『最後まではしない』という言葉を耳にした途端、いよいよ尊のものにしてもらえるのだと期待に満ちていた美桜の胸が見る間に萎んでいく。
そのせいか、処女の自分とは違って、僅かに息は上がっていても尊はいつも通りに見えてくる。
きっと、それだけ尊がこういうことに慣れているからなのだろう。
いくら余裕なさげに縋ってきても、こうしてすぐに余裕を取り戻せるのも、最後までしなくても平気なのも、それだけ経験値に違いがあるということに違いない。
ーーそんなの当然だ。そもそも私には経験がないんだもん。そんな私相手では、物足りないのかもしれない。
『初めては特別なものにしてやる』なんて言ってくれたけれど、言葉ではどうとでも言える。
もしかすると、処女は面倒だからって、このままずっとこうやって、相手にしてもらえないのかもしれない。
ーーそんなの耐えられない。
思考がそこまで至ったとき、美桜の眦からあたたかな雫がポロポロと零れ落ちる。
それと一緒に、昨日今日と二度にわたって、まともに相手をしようとしてくれない尊へ対する美桜の不満が決壊するかのように溢れ出てしまっていた。
「どうせ私なんかオコチャマだし、相手にならないんだってことぐらいわかりますけど。どうやったら、ちゃんと女として扱ってくれるんですか? 教えてください。じゃないと夫婦になんてなれません」
美桜の言葉に、尊は虚を突かれたように呆然としているようだが、そんなこと知ったこっちゃない。